長尾上杉氏印章〈晴景、謙信、景勝所用/〉 ながおうえすぎしいんしょう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 室町 安土・桃山

  • 室町~桃山
  • 27顆
  • 重文指定年月日:19940628
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 個人
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 わが国印章史の流れが公式令【くしきりよう】による大和古印【やまとこいん】系と、宋朝禅林様の印章系に大別され、特に後者が本来無印であった武家文書の世界に影響を与え、戦国印判状【いんばんじよう】の時代を生み出すに至ったことは周知の通りである。
 戦国時代越後に覇を唱えた長尾上杉氏も、長尾能景が明応五年(一四九六)七月十日付の遵行状に黒印を用いたのを初見とし、為景が黒印・鼎形朱印を用いたほか、謙信、景勝も種々の印章類を用いたことが伝存文書の上からも知られている。とりわけ上杉家にはこれら晴景、謙信、景勝所用になる印章の遺品がまとまって伝存する点、類例稀なものがある。上杉家伝来になる印章類は「〈謙信公/景勝公〉御朱印並御華押」と貼紙する黒漆塗被蓋【かぶせぶた】箱一合と、「謙信公御華押」と題簽を付した黒漆塗印章箱や、歴代藩主単位に箱、包に仕分けしたものを納めた黒漆塗被蓋箱一合とに納められて伝わっているが、その内部にはいくつかの混乱がみえる。内容は印章一三顆。内訳は謙信所用二顆、謙信および景勝所用四顆、景勝所用六顆、不詳一顆。花押印は一四顆。内訳は晴景一顆、謙信九顆(うち朱花押二顆)、景勝四顆からなる。印章、花押とも材は黄楊【つげ】が主で、一部に桜・檜材を用い、鈕までを一材で作り、背には「上」等の天地表示を陰刻する。
 上杉氏による印判状の用例が主に制札や過所、あるいは知行充行状などの分野にしかみられない点や、景勝が謙信所用の四種の印章を継続使用した事実などについては既に等しく論じられているところであり、これら二七顆の印章は、こうした使用例を示す具体的遺品として、わが国印章史上に重要である。
 附【つけたり】とした上杉氏歴代藩主印章は、二代定勝から十一代斉定までの各花押四五顆、黒印一六顆で、なかには籠字花押印や袖印などもみえ、併せてその保存を図ることとした。

長尾上杉氏印章〈晴景、謙信、景勝所用/〉

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