4個の小壺を肩部に付けた壺部と5段状の器台部とからなる須恵器である。壺の頸部には櫛描き波状文を3段に施し、肩部には4個の小壺を等間隔に巡らし、その間には粘土塊で作った馬2頭、猪1頭、鳥4羽を配している。器台部は5段からなり、上の2段は櫛歯文、中の2段には櫛描き波状文を飾り、下の1段は無文のままで装飾を施していない。また上の1段には円孔を4個、2段目には長方形の透かし孔を4個、3、4段目には三角形の透かし孔を各々4個ずつ穿っている。色調は壺部が、黒灰色、器台部が灰色を呈し、壺の頸部から胴部の一部にかけて、自然釉がみられる。全体に丁寧なつくりで、均斉のとれた器形を呈し、装飾の動物像もよくその特徴を表している。6世紀後半の古墳時代後期に、葬祭の供献に用いられた須恵器で、出土地は明らかでないが、中国地方の出土品と考えられる。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.279, no.11.