蔵王権現懸仏残欠 ざおうごんげんかけぼとけざんけつ

工芸品

  • 鎌倉時代 13世紀
  • 銅製 鋳造
  • 像高13.9
  • 1個

 懸仏(かけぼとけ)の尊像部分が遺ったもの。右足を膝で折って高く上げ、左足に磐石(ばんじゃく)を踏みしめ、右手を高く振り上げ、左手を剣印を結んで腰に置く特異な形勢から、蔵王権現(ざおうごんげん)を表したものと考えられる。眉を怒らせ眼を大きく見開き、牙を上出した口元を引き締める極忿の表情であるが、全体に小作りで愛らしい印象を与えることから、平安の余香を漂わせる13世紀前半頃の作かと推測される。奥行きのある体躯(たいく)や躍動感ある表現は、高い造形性を示しているが、衣文の線刻は浅く彫塑性(ちょうそせい)は乏しい。蔵王権現は役行者(えんのぎょうじゃ)が感得したと伝えられる尊格で、修験道(しゅげんどう)で特に尊崇された。

古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.25, no.10.

蔵王権現懸仏残欠 ざおうごんげんかけぼとけざんけつ
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