木造不動明王坐像 もくぞうふどうみょうおうざぞう

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19880606
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 外山区
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 桜井市外山【とび】の不動院に本尊として祀られる等身の坐像である。本躰に施された彩色、切金文様までよく残り、光背、台座も、その彩色を含めて大略当初のものと認められる。
 本躰は榧材を用いた寄木造で、頭躰幹部は正中線の左方で矧合わせた二材に背中から腰半ばまでの板材を矧足し、これに両脚部の横一材、両腰脇の各一材を矧付ける構造である。内刳りを施し、三道下で割首とする。左手は肩、臂と手首で、右手は肩と手首前方で矧ぐほか、左手の前膊半ばと右手の臂上方で矧いでそこに厚三センチ程のマチ材を挿む。表面は矧目を布貼とし、錆下地黒漆塗の上に白色下地の彩色を施す。肉身部の色は不明であるが、衣部は条帛、裳、腰布の各表裏および縁取りを朱、丹、群青、緑青と淡褐色にみえる色などに塗分けており、切金による二つ巴に霰散らしの丸文、菊花入りの丸文や唐草文、彩色による花丸文などをあしらい、縁取りを除いては切金による網目、七宝繋などの地文様でその間を埋める。光背は左右に寄せる板材三枚、台座の各段は概ね正背面の二材の間に両側の各一材を挾む四材を基本とする構造で、いずれも桧材を用いる。表面は黒漆塗の上に、光背は漆箔および白色下地の朱彩、台座の見付は朱の輪郭と四段の繧繝からなる白色下地の彩色を施す。
 像は、幅のある肩を軽くいからせ、細い腕の臂と薄い膝の張りをともに大きくとった、のびやかな正面観を示す。左目をすがめ、ゆがめた口の両端に小さな牙をみせる相貌は優しく、胸や腹の肉どりは穏やかな球面を形づくる。浅く刻まれた衣褶の表現も洗練されている。その作風は、和歌山金剛峯寺の不動堂本尊(重文)にやや先行するかに思われ、繊細な切金文様、本躰に較べていくぶん簡略なつくりの火焔光背、瑟々座とともに、平安末十二世紀の特色をよくうかがわせるものといえよう。
 左手の第二指先、第五指とそれに続く掌の一部、裳先、胸飾および腕、臂釧と持物のほか、光背と台座の一部は後補である。

木造不動明王坐像

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