木造不動明王坐像 もくぞうふどうみょうおうざぞう

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19880606
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 瑠璃寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 天台系の山岳修験道場として栄えた瑠璃寺に伝来した平安前期の不動明王像である。像容は空海によって造られた高雄曼茶羅や東寺講堂の不動明王像と共通するところが多いが、髪の毛筋を表わさず、顔をほぼ正面に向け、口の両端に円珍が感得した黄不動のように上向きの牙を出すことなどが異なる。同形の遺品はきわめて稀で、この像に先行するものとしては京都・広隆寺像(重文)が知られるのみである。
 構造は、木芯を中央にこめた一材から頭部、躰躯とともに左上膊部のすべて、右上膊部を内外にほぼ二等分する縦の線の内側までを彫出し、両脚部の横一材を矧寄せるもので、内刳りは頭部の背面、躰部の地付に至る背面、両脚部材を合わせた像底から施し、これによる頭躰各背面の開口部に、それぞれ一材を矧足す。両前膊部、両手先は各臂、手首で太い雇〓ないしはチギリを用いて矧ぐ。背面の二材は桧、他は榧と思われる堅緻な材で、現状はやや厚手の錆下地を施し彩色した当初の表面が少なからず残るが、色や文様は判然としない。
 像は全体に太造りであるが、大きな頭部と厚みのある肩に対して腰はつよく引締まり、両膝は広く前方に張出しており、しかもそれらが深い奥行のうちに有機的なつながりをもって構成されている。その全体観にはゆったりとした落ち着きが感じられよう。目鼻立ちや胸のくくりを表わす彫口はなお深く鋭いが、総じて穏やかに整えられた肉どりや衣文の表現は、量感や材質感を強調した九世紀のそれにも増して重厚な趣を示す。製作は十世紀中頃と考えられ、均衡のとれた破綻のない造形には中央作を思わせるものがある。
 頭頂の蓮華、裳先、底板と持物は後補である。

木造不動明王坐像

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