木造薬師如来坐像(弥勒寺金堂旧本尊)

彫刻 / 鎌倉

  • 鎌倉
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19890612
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 大善寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 明治維新の神仏分離の際に、宇佐八幡宮の神宮寺であった弥勒寺の金堂から移された丈六の薬師如来像で、現在、当寺禅堂に安置されている。
 この地方の著名大寺の本尊として伝わった像にふさわしく、面相部や躰躯に十分な量感と張りを持たせながら安定した力強い姿にまとめあげられており、その堂々たる正面観は、建長六年(一二五四)頃の奈良・福地院・木造地蔵菩薩坐像(丈六像、重文)に似通うものがある。柔らかに起伏する裳の写実的表現もまた巧みであるが、大衣の衣文処理はやや形式的で、なお厳しさを保つ面貌とを勘案すれば、本像の製作は鎌倉時代十三世紀後半と考えられよう。頭躰幹部を各四材を矧寄せて根幹材とし、胸部上半までを頭部材から木取し、その下端を水平にして躰部材に接合する構造もこの頃のものとして矛盾はない。
 弥勒寺は八世紀に創建されて以来、堂舎とそこに安置される諸像の焼失と再興を繰り返しており、近世の記録ではあるが、文永年中(一二六四-七五)弥勒寺金堂本尊の再興を伝えるものもある(『益永家記録』)。その当否はともかくとして、本像の作風からはその製作の下限をこの頃におくこともできよう。
 現在、表面の布貼、漆箔が剥落し、矧目も緩んで、その尊容を損ねているが、本躰は内刳りを施した両手先まで、また光背も周縁部を失うが二重円相部は大略当初のものを残している。当代に稀な薬師坐像の大作として、その保存の良さと共に伝来の由緒をも併せて賞すべき遺品である。

木造薬師如来坐像(弥勒寺金堂旧本尊)

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