十種香は室町時代以来の最古の組香といわれ、あらゆる組香はこの変化したものといえる。一の香(三包)、二の香(三包)、三の香(三包)、客香(一包)、計四種類の香木十包を順番に聞いて、香札を打ち、当否を競う遊び。十種香の諸道具を一揃えとして納めたのが十種香箱。上下二段で、中蓋の懸子は香盆と兼用される。この香箱は、13代鍋島直泰夫人紀久子の実家である朝香宮家に伝来したもの。金沃懸地とし、近景には土坡に松、中景には岩や波上を群れ飛ぶ千鳥、遠景には帆掛け船や雲を表す。磁製香合の染付菊御紋と小葵模様から、皇室にゆかりの品であることが分かる。