{菊花螺鈿鞍〈前輪欠/〉/黒漆鞍/・黒漆鐙} きくからでんくら/くろうるしくら/くろうるしあぶみ

工芸品 / 平安 鎌倉

  • 平安~鎌倉
  • 菊花螺鈿鞍:二枚居木、総体黒漆塗螺鈿の鞍。前輪欠失。鞍一箇付。後輪は磯高く、海を深く刳って尻厚く、雉股の張りが強い。居木は輪の膚付けに切組み、中央に力革通穴をあけ、裏面に力革の抉り込みを彫る。加飾は総体黒漆地に居木先、洲浜、鞍とも大小の菊花を象った厚い夜光貝を貼り詰める。蕊のみ別貝を嵌め、一枚貝に花弁を線刻しているが、鞍の菊花は蕊、各花弁とも別貝を組み合わせる。

    黒漆鞍:二枚居木、手形のある海無鞍。山形丸く、両輪の周縁は覆輪形を造り出す。居木は両輪の膚付に切組み、中央に力革通穴をあけ、裏面に力革の抉り込みを彫る。総体に黒漆を塗り、覆輪部には朱漆を重ねるが、共に後世の修補と思われ、当初は素木鞍であったと考えられる。前輪の手形も後世の加工。

    黒漆鐙:鳩胸の著しく高く張った舌長鐙で、欅材を一木彫して黒漆を塗っている。紋板には賽目形の紋を彫り込み、具頭、刺金は鉄製。紋板の上下の縁、柳葉には鉄板金を廻らしている。柳葉の板金は一部残るのみで、一方の鐙の紋板以上欠失。
  • 菊花螺鈿鞍:後輪高33.6 後輪馬挟41.2 居木総長42.6 
    黒漆鞍:前輪高28.2 前輪馬挟31.4 後輪高25.5 後輪馬挟39.3 居木総長40.0
    黒漆鐙:総高28.5 長36.0 舌幅10.0  (㎝)
  • 重文指定年月日:19810609
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 大島神社・奥津島神社
  • 国宝・重要文化財(美術品)

菊花螺鈿鞍は、大らかな螺鈿技法に古様が見られ、居木幅は現存二枚居木鞍の中で最大の幅を有し、螺鈿鞍中の最古例の一つと考えられる。黒漆鞍は古代様式の鞍で、当初は素木鞍として製作されたものと考えられる。この手の鞍は手向山神社の重要文化財素木鞍など現存するものは比較的少ない。黒漆鐙も鞍と同じく素木製と考えられるもので、一具として伝来してきた。いずれも螺鈿鞍、古代様式鞍の作例として貴重である。

{菊花螺鈿鞍〈前輪欠/〉/黒漆鞍/・黒漆鐙}

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