木造獅子/木造獅子 もうぞうしし

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 一対/一対
  • 重文指定年月日:20040608
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 高野神社
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 いずれも無角の獅子の一対像で、高さ二尺をこえる大型のその一と九寸ほどの小型のその二からなり、美作国二宮(一宮とも)の高野神社に伝来する。
 その一は、阿形が頭部をほぼ正面に向け、たてがみは束目(先端少し巻く)にあらわし、二段に垂れ、両肩、背中にかかる。両耳を正面向きに立て、瞋目、開口、前肢を伸ばして手前にやや引き、後肢を屈して蹲踞する。上下顎に髭(上顎植毛、下顎毛束彫出)をあらわす。両前肢後方に翼状、両後肢後方に巻貝状の毛束をあらわす。吽形は閉口するほかはほぼ阿形に準じる。その二は、阿形が、頭部を正面に向け、たてがみを束目(直毛)にあらわし、両肩、背中にかかる。両耳を正面向きに立て、瞋目、開口、前肢を伸ばし、後肢を屈して蹲踞する。下顎に髭(毛束、先端巻毛)をあらわす。吽形は閉口(上歯牙を出す)するほかは阿形に準じる。
 構造は、その一がカツラと思われる広葉樹材を胴中央辺で前後に矧ぎ(内刳りなし)、尻尾を矧ぐ(亡失)。木片(ヒノキ材)および乾漆等を用いて、眉、眼球、頬、牙、下顎の髭の一部、たてがみの一部を厚く盛り上げるが、これは中世ころの所為と思われる。表面は布貼錆下地漆箔および彩色仕上げになる。その二は、ヒノキと思われる針葉樹材の割矧造で、頭体幹部を胴半ばで前後に割り矧ぐ。前半材は内刳りせず、後半材にのみ浅く内刳る。尾尻を矧ぐ(亡失)。表面は、錆下地漆箔および彩色仕上げで、阿形は肉身漆箔、たてがみを緑にし、髭も緑地に毛筋を切金で描き、吽形もほぼこれ準じるが、肉身部を銀漆箔とする。
 二対とも口の阿吽以外ほぼ同一の像容となるのは、獅子一対という構成とともに奈良様の表現といえるが、平安時代になっても稀にみられる形式である。その一の表面に盛られた後補部分を除いて当初の像容を推察すると、素地の露出した後肢のような硬い筋肉質の引き締まった姿が想定される。こうした肉身表現は、同じ奈良様の一例である薬師寺像(寛治元年〈一〇八七〉、重文)にはなく、むしろ遡って個人蔵の東寺旧蔵像(九世紀か)に近い。製作時期を推定するに足る獅子の遺例は少なく、ほかに獅子狛犬の作例をも参照すると、大きくみて一〇世紀ころの造立と位置づけられよう。
 その二は上体を大きくつくり、腰や後肢を小さくする独特の造形をなし、直毛のたてがみなど当麻寺当麻曼荼羅厨子の獅子(奈良時代、国宝)に似る。本像はこのような奈良様に従いながら、口髭は形式化したてがみは厳島神社像(重文)に近く、また忿怒表現が和らいでいることからして、和様化の進んだ平安後期一二世紀ころに位置づけられよう。
 獅子一対となる遺例は重要文化財でも遺例が少ない。その一は獅子一対としてはその最古にして代表作といえ、その二も平安後期の優れた作例として貴重である。

木造獅子/木造獅子

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