定印【じよういん】をむすぶ阿弥陀如来の周丈六【しゆうじようろく】像で、元仁元年(一二二四)に前太政大臣西園寺公経【きんつね】が建立した北山堂の遺像と伝えられる。
像は桧材を用いた寄木造りである。正中線で左右に合わせた二材を頭体の構造の基本とし、これに、眉、髭を刻出し玉眼を嵌入した左右二材の面相部、体躯背面を広く被う背板二材、前後二材の左肩外側部、数材を寄せた両脚部などを矧ぎ付ける。螺髪【らほつ】を各別製植付け、表面は布貼りサビ下地漆箔とし、丁寧な内刳りを施した像内も布貼りの上に黒漆を塗り、底板(亡失)より下方の腰廻り及び膝裏に金箔を押している。その入念なつくりは有力貴族の造仏とするにふさわしい。的確な姿態の構成、ぴんと張りつめた若々しい肉取りや適度の装飾性を加えた流動感あふれる衣文表現をみれば、北山堂創建時における一流仏師の作と考えて誤まりなかろう。
保存状態もきわめてよく、この時期における数少ない都ぶりの大作として注目される。