綴葉装。料紙に斐紙を用い上下二帖からなる。所収歌は一九九五首を数え、諸伝本中で最も多い。文中隠岐撰抄で除かれた歌には下に朱の合点が付され、また流布本に欠く切出歌十七首には墨勾点を付し、墨書注記がみえる。下帖末に承元三年六月十九日定家の本奥書並に正安二年十一月下旬藤原為相が書写校合の本奥書がある。本帖は鎌倉後期の書写本とみられ、同一筆者の手になるが、上帖末に七紙にわたり永正九年八月廿日三井寺沙門静秀の補写及び奥書がみえて、その伝来を明らかにしている。本書は定家書写本系の古態を存する鎌倉時代古写本として価値が高い。