両巻共に法華経要文和歌の懐紙をつないで各一巻としたもので、妙満寺本は二十首、藤井家本は二十三首を収めている。懐紙の筆者は妙満寺本が、光厳【こうごん】天皇を始めとして徽安門院、尊円親王ほか十八名、藤井家本は光厳天皇以下十七名で、このうち光厳天皇ほか九名が両巻に重複している。各懐紙の紙背には版本法華経を摺字した跡があり、文字の判明する部分はいずれも詠題に関する各品の本文が摺られている。従ってこの和歌懐紙は法華経に結縁して要文和歌を詠進した人々の懐紙を各品別に翻して料紙となし、法華経各品を摺写したものと認められる。和歌懐紙成立の事情は未詳であるが、両巻の詠者はいずれも花園天皇の縁者、近臣が中心であって、文和三年十一月花園天皇七年の御遠忌の追善のために詠進された折のものと考えられる。