天台座主尊性法親王の追善のために作られた版本供養経で、法親王生前の自筆消息をつなぎ合せて料紙とし、紙背に法華経(開結共)十巻を摺写している。本経はもとは各品一巻に装幀された一品経で、表紙外題、各品内題、版式の差異及び料紙の状態等によって、原状は法華経二十八巻、無量義経三巻、観普賢経一巻の三十二巻本であったことが判明する。紙背の消息はおよそ百十七通、親王が天台座主であった寛喜年間から嘉禎年間に至る間を中心としたもので、その内容は、法親王の地位を反映して朝廷の趨勢、叡山を中心とする社寺の動向等を伝え、かつ物語絵巻、絵師等に関する文芸史料も含まれている。