園城寺新羅善神堂 一棟
貞観二年(八六〇)の勧請と伝え、園城寺の鎮守の一つである。現在の建物は暦応三年(一三四〇)足利尊氏の造営と伝えるが、貞和三年(一三四七)の文書に堂塔工程を記したものがあり、そのうちに新羅社も含まれているから、実際には、その頃造営があったのであろう。桁行三間、梁間二間の身舎の前に一間通りの庇をつけて流造とするが、庇の部分も床を張り、格子戸を入れて前室とし、さらに一間の向拝をつけている。舟肘木を用い、構造は簡素であるが、庇の欄間につけられた牡丹に鳳凰の透彫など、華麗優秀な建築彫刻を付加して、室町時代特有の様式を示している。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)