木造薬師如来及両脇侍像 もくぞうやくしにょらいおよびりょうきょうじぞう

彫刻 / 鎌倉

  • 鎌倉 / 1310
  • 3躯
  • 重文指定年月日:19950615
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 本山慈恩寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 当寺薬師堂の本尊で、十二神将像(重要文化財)と共に祀られている。中尊像は檜材の寄木造で、頭体幹部を前後二材より造る構造になる。昭和六十三年度に行われた修理の際に中尊頭部内から延慶三年卯月、花洛院保の銘が見いだされ、製作年代と作者の名が明らかになった。院保は徳治三年(一三〇八)に神奈川・称名寺の釈迦如来像(重要文化財)を製作したことが知られる院派仏師である。面長ののっぺりした顔立ちや、箱を積み重ねたような体躯の構成、大まかな衣文のさばきなど、その作風には、京都・清凉寺像の模像である称名寺像よりも院派としての特色がよく表れている。像内に体幹前後材の繋ぎ左右各一を彫り残し、前面材から像底に像心束を下ろす構造もこの派の遺品に多くみられる。
 両脇侍像は共に朴かとみられる材の割矧造で、両手の構え、腰の捻りの方向を同じくしており、対称的な形姿に造られることの多いこの種の像としては珍しい。肉身を金泥塗、衣部を漆箔とする仕上げは中尊像と共通するが、作風はやや異なり、材質の違いを考え併せると、中尊像のみ京都で製作され、脇侍像は当地において造られた可能性もあろう。なお「花洛院保」という名乗りには像が当地に送られることを作者が意識した様子がうかがえ興味深い。
 鎌倉後期の院派仏師の基準作例であり、この頃における同派の東北への進出を示す好個の遺品として貴重である。

木造薬師如来及両脇侍像

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