梁塵秘抄口伝集巻第十残巻 りょうじんひしょうくでんしゅうまきだいじゅうざんかん

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 鎌倉

  • 東京都
  • 鎌倉
  • 1巻
  • 東京都渋谷区東4-10-28
  • 重文指定年月日:19930610
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 國學院大学
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『梁塵秘抄』は後白河法皇撰になる今様歌謡集で、『本朝書籍目録』にもその名がみえ、その内容は歌詞集たる『梁塵秘抄』十巻と、口伝等を記した『梁塵秘抄口伝集』十巻からなっていたと考えられている。本書は後白河院自らが遊女、傀儡などから直接習得した体験を基に、家元的な自覚の下に書き著されたもので、院政期の民衆像を復元する上に貴重な資料として知られている。しかし現存する伝本は少なく、「梁塵秘抄切」断簡を別とすると、「梁塵秘抄巻第一」(断簡)、「梁塵秘抄巻第二」、「梁塵秘抄口伝集巻第一」(断簡)、「梁塵秘抄口伝集巻第十」の四種、三巻分が伝わっているに過ぎない。
 国学院本(武田祐吉氏旧蔵)は鎌倉時代中期書写になる『梁塵秘抄口伝集』巻第十の残巻で、楮紙四紙をついで料紙とするが、現状は首部を欠き、「院の新院とまうしゝとき」云々以下七〇行分を存する。本文は一紙一九行、一行一八~九字前後にやや速筆に暢達した書風をもって書写される。本巻は巻第十の巻頭第一段の院の今様修業の経過部分を収めたもので、初めはさしたる師もなく、誰彼の差別なしに今様を学ばれた後白河院が、保元二年(一一五七)三四歳の時に今様の正格を伝えた唯一の故老たる五条尼乙前を尋ねて師弟の契りを結び、様々な歌や曲調を習得された次第を記している。
 『梁塵秘抄口伝集』巻第十は康暦元年(一三七九)書写になる伏見宮旧蔵本(宮内庁書陵部蔵)が知られるが、本書をこれと比較すると八か所に本文の異同が認められる。なかでも本書にみえる「おなし御所に候しかは」「やかてくしてまひりたりしかは」の部分は伏見宮本にみえないほか、「いちめ/ほそ」の書き様は、伏見宮本にみる読み・区切りかたに再検討を与えるなどの特徴がみえ、表記部分までを含めると両者の相違点は枚挙にいとまがない。
 本書は残巻ではあるが、鎌倉時代に遡る『梁塵秘抄』の現存最古写本として、また伏見宮本と系統を異にする写本として貴重である。

梁塵秘抄口伝集巻第十残巻

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