僻蓮抄 へきれんしょう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 南北朝

  • 南北朝
  • 1巻
  • 重文指定年月日:19910621
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 長谷寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『僻連抄』は二条良基の連歌論書としては最も初期のもので、康永四年(一三四五)二六歳の時の執筆になり、貞和五年(一三四九)成立の『連理秘抄』の草稿本にあたる。その内容は連歌を作るのに必要な基本事項を収め、その向かうべきところを示した学書として知られている。
 本巻は、その現存最古写本として著名なもので、体裁は後補白茶蒲公英文様蝋牋表紙を装した巻子本である。料紙には天地に横墨界を施した黄蘗染楮紙(打紙)を用い、一紙約一九行、一行一七字前後に一筆に書写している。本文は作法と式目部からなり、巻頭に「僻連抄」の内題を掲げ「連歌は歌の雑躰なり」云々の序四三行がある。ついで「一、連歌は心よりおこりてみつからまなふへし」以下、連歌の学び方、才学、初心、心、詞、てにをは、賦物、嫌物について、連歌の種々の体、会席、参会者、勝負、風躰、寄合、発句、脇句の詠み方など一六項目にわたって、その作法を説き、その後に弘安の新式による連歌式目を掲げ、末に「十二月題」として季題を添えている。
 巻末には二条良基本奥書以下についで「觀應貳年七月日書寫之」の書写奥書があって、本巻がその成立の六年後に書写された本であることを明らかにしている。このほか、「康永四年三月下旬之比、自鷲尾邊不慮所尋得也」の本奥書からみて、この本が「あるゐ中人」の求めに応じて作られたことが知られ、また「写本云」として「末代亀鏡誠不可有比類者也、尤以可奉賞翫之」とあり、この『僻連抄』が連歌師の間で珍重されていたことなどが判明する。なお、本巻の巻末二紙の紙背には「十種供養式」が書写されている。
 この『僻連抄』は、のち貞和五年に改訂により『連理秘抄』となるが、本書と『連理秘抄』本文を比較すると、『僻連抄』には発句、脇句、てにをはの用い方などに実例をあげて詳説するほか、連歌の風体については救済、順覚、信昭を例にした記述があるなど『連理秘抄』にみえない部分があるなどの相違が認められる。『連理秘抄』に改訂される以前の『僻連抄』の伝本としては、他に近世の抄出本が知られるのみで、本巻はその唯一の古証本として注目される。

僻蓮抄

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