「花よりもいっそう花らしい、花の生命を生まなくては、花の実体をつかんで、画面に定着しなければ、花の作品は生れません。つまり私の描きたいと念願するところの花は、私じしんのみた、感じた、表現した、私の分身の花です。この花に永遠を封じ込めたいのです。」(「花より花らしく」『花より花らしく』)三岸節子が花に寄せる思いを記した言葉は作品同様、象徴的に花を表し心に残る。描かれた花は何の花ということはなく、作者が置かれた環境やその時々の心の状態によって、様々な花が生み出された。本作品は黄金色を背景に画面いっぱいに広がる花の赤色がとりわけ印象的である。厚塗りの堅牢なマチエールは、花の生命力とともに画家の生きること、描くことに対する強い思いを謳い上げている。