清新な印象を感じさせるやわらかな白い花が、緑と褐色の落ち着いた色調を背景に咲き誇る。湧き立つような花びらが生き生きと描かれ、画面いっぱいに清々しい香りを放っている。情熱的な赤い花の作品が知られる作者であるが、意外にも白の花を好み、多く描いている。「私は白い花が一番好きである。白い花にわが生命をこめる。その時の様々な心の動きをこめて描く。悲しいとき、生きているのが堪えられぬとき、生命のぎりぎりのとき、白い花を描く。」(「花譜12ヶ月 2月 白い花」『未完の花』) 切り詰めた色使いや、緑の色面を切り取る黒のシャープは線からは、この絵を描いている時の作者の緊張感や厳しさが伝わってくるようである。花瓶には馬に乗る中国風の人物と2羽の鳥が描かれ、全体の色使いと相俟って東洋的な雰囲気を漂わせている。