八王子車人形 はちおうじくるまにんぎょう

民俗 無形民俗文化財

  • 選定年月日:19961128
    保護団体名:西川古柳座
  • 記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財

 わが国の人形芝居における人形の操作方法は、十八世紀に大阪で成立したとされる「三人遣い」が、最も繊細で精巧なものとされる。これは一体の人形の「頭部および右手」「左手」「足」を、三人の操作者が、それぞれ専門に扱うもので、その表現力の豊かさによって全国的に広まっていった。その後十九世紀になると、この三人遣いによって磨かれ蓄積された巧みな人形操作を、一人の遣い手によって実現しようとする工夫があらわれるようになった。
 八王子車人形は、その一つで、文政七年(一八二四)に埼玉県に生まれたとされる永岡柳吉が、大阪に出て文楽を学び、さらに江戸に戻って西川古柳を名乗り、工夫を重ねて創案したものとされる。
 車人形は、幕末から明治にかけて東京・神奈川・埼玉などで広く行われたものとされ、当初は説教節によったが、今は義太夫節でも演じている。伝承演目は「小栗判官一代記【おぐりはんがんいちだいき】」や「出世景清【しゆつせかげきよ】」「阿波鳴門【あわなると】」など二〇を超え、その伝統は現在も西川古柳座によって継承されている。
 この車人形の、最も大きな特色は、前方に小振りな二輪と後方に中央がやや盛り上がった大きめの一つの車輪を仕込んだ台に操作者が腰かけ、台を紐で腰に固定し、体重を後方にかけることによって自在に舞台を移動できるように工夫したことにある。一体の人形の操作は、この台に腰かけた一人の遣い手が、三人遣いと同様に人形の背中から手を差し込むが、左手で人形の頭部を操作し、さらに人形の左手を支え、右手は人形の右手の操作とともに、人形の左手に結んだ糸を操作して左手も操り、さらに人形の足の踵に小さな木のつまみを付け、それを操作者の足指で狭んで人形の足を操って行うものである。
 以上のように八王子車人形は、芸能の変遷の過程を示し、地域的特色をもつ重要なものである。

八王子車人形

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