東郷文弥節人形浄瑠璃は、三味線音楽を伴奏にした人形芝居である。古風な三味線音楽の一つである文弥節にのせて、男性役の人形は一人遣い、女性役は左手遣いがついた二人遣いで演じられるなどの特色がある。
東郷文弥節人形浄瑠璃は文弥節の語り、三味線の伴奏により、人形を操って演じられる。
東郷の文弥節は、太夫、三味線のほか、小太鼓、拍子木からなる。太夫の語りは感傷的な節付けであり、三味線は語りの合間に定型の演奏を入れるほか、小太鼓、拍子木とともに語りに合わせてにぎやかな演奏を行う。
男性役の人形には左手がなく、操作は一人で行う。女性役の人形には左手があり、頭部と右手の遣い手とは別に左手遣いがついて二人で操る。人形の操り方は、人形踊りといわれているように、人形と人形遣いが一体となって伴奏に合わせて踊るように遣う。
日本の伝統的な人形芝居は、義太夫節【ぎだゆうぶし】を伴奏にした三人遣いの人形によるものが多い。そのなかで東郷文弥節人形浄瑠璃は、義太夫節より古い文弥節を伴奏に、三人遣い以前の一人または二人遣いによる人形芝居であり、芸能の変遷過程や地域的特色を示し重要である。
(※解説は指定当時のものをもとにしています)