鼠志野亀甲文茶碗(峰紅葉) ねずみしのきっこうもんちゃわん(みねのもみじ)

工芸品 / 安土・桃山

  • 東京都
  • 桃山
  • 素地は黄白色陶胎で、轆轤で挽いた後に作為的に歪ませ、篦で削って成形した茶碗。やや小振りの高台から高い腰にかけて直線的に開き、腰には稜を立て、童は内にすぼまりつつ立ち上がる。口縁には山道状にゆったりとした起伏をもたせ、口辺したの一方と、胴の四方には篦で太い条線を廻らす。
     表綿は胴から見込みにかけ鬼板を化粧掛けして、胴の一方には四箇の亀甲文を、他方には一箇の亀甲文と檜垣文を、また見込みにも一箇の亀甲文と檜垣文を対照させて彫り表し、こののち高台を除き全体に長石釉を懸けている。釉蝶はやわらかで、腰は黄白色を呈し、胴から見込みにかけては赤黒い鬼板の下地に長石釉がかかって鼠色に発色している。口縁の一箇所に漆による小補修がある。
  • 高7.7~8.8  口径13.6~14.1  高台径6.0~6.3 (㎝)
  • 1口
  • 公益財団法人五島美術館 東京都世田谷区上野毛3-9-25
  • 重文指定年月日:19930120
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 公益財団法人五島美術館
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 桃山時代後期から江戸時代初期にかけて美濃で焼かれた鼠志野の作品である。鼠志野は下地【したじ】に掛けた鬼板【おにいた】(鉄銹)【てつさび】を篦彫【へらぼ】りし長石釉【ちようせきゆう】を施して文様を表す独特の技法によるものである。
 轆轤【ろくろ】で挽【ひ】いた後に作為的にひずませ篦で削って成形し、量感あふれる力強い形姿【けいし】をみせるが、その手取りは意外に軽い。胴の一方にくっきりと描かれた亀甲文は、山道状の口縁に沿って一列に配されて見込みの檜垣【ひがき】文と対置された亀甲文へと巧みに続き、また他方の一見無造作に描かれたかに見える檜垣文も均衡を保ちながらほどよく配されている。
 さらに下地の鬼板と長石釉の重なりは微妙な色合いを醸し出し、見事な景色【けしき】を織りなしている。「峰紅葉」の銘も、この景色と山道状の口造りからの命名と見られる。
 創意にあふれた形姿、変化の妙を見せる景色を有する鼠志野作例中の優品である。

鼠志野亀甲文茶碗(峰紅葉)

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