浅茅が露 あさじがつゆ

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 南北朝

  • 奈良県
  • 南北朝
  • 1帖
  • 天理大学附属天理図書館 奈良県天理市杣之内町1050
  • 重文指定年月日:19890612
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 学校法人天理大学
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『浅茅が露』は、鎌倉時代の成立になるいわゆる擬古物語【ぎこものがたり】の一つで、本帖はその現存唯一の写本である。
 体裁は綴葉装、現状は紺地竹虎文金襴の後補表紙を装している。料紙は楮紙で、首に一丁の遊紙を置いて「春すき夏もたけしかは」以下の本文を書写し、外題、内題はともにない。本文は現存の墨付八八丁、二人の合筆になるもので、帖首は半葉一一行程度に温和な筆致で書き始めるが、しだいに速筆の趣を加えて行数も多くなり、帖末は半葉二一~二行書きとしている。帖末を欠き、書写奥書等はないが、その書風等より南北朝時代の書写になるものと認められる。なお、前述の通り本帖には書名がないが、本文中に存する和歌が『風葉和歌集』(文永八年(一二七一)成立の歌集で、当時流布していた物語の中の和歌をあつめたもの)に「あさちか露」の歌として収められていることからその書名が判明するものである。
 物語の内容は、主人公「二位中将」と女主人公「姫君」の悲恋物語と、主人公の友人「三位中将」をめぐる出家得道の物語との二つの主題を中心に展開されるが、本帖が末尾を欠失するため物語の結末は明らかでない。『風葉和歌集』では主人公「二位中将」が「入道関白」とされており、欠失部分にはさらに数年の記事があったかと思われるが、『風葉和歌集』に「あさちか露」の歌として収める一〇首のうち九首が現存部分に存しており、また物語の主要部分はほぼ尽くされていると考えられ、欠失の部分の分量はさほど多くないと推測されている。
 現在、散逸したものが多い鎌倉時代の物語の中で、中世に遡る写本の存するのは稀で、本帖は国文学研究上に貴重である。

浅茅が露

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