輪花形の口縁部に花唐草をあらわし、外側面に唐花唐草文を染付であらわす。見込みには椿文を輪をかくように描いているが、その輪郭線を一方は有田の初期色絵に特徴的な色絵のみで描き、もう一方は後の鍋島焼きの特徴である染付を用いて描いている。古九谷様式から初期鍋島様式への移行期の作例であり、初期鍋島の前身的な作品とされる。安政2年(1855)作成の「御寄附物帳」に「南京焼錦手大御鉢壱ツ損物 二」とあるのが本作で、2枚1対で伝来した。初代鍋島勝茂から菩提寺である高伝寺に寄附され、大正14年に鍋島家に返納された。