岐阜県美濃市蕨生地区に伝承されてきた楮和紙の製作技術。美濃の地域では早くから紙が漉かれ,大宝2(702)年の美濃国の戸籍用紙が正倉院に残る。江戸時代以来,本美濃紙は,最高級の障子紙として高く評価されてきた。現在は,主に,障子紙のほか文化財保存修理用紙として用いられている。入念な手作業で原料処理を行い,不純物をよく取り除いて楮の繊維のみを用い,良質な製作用具を使用して我が国特有の「流し漉き」で漉き,板に貼りつけて天日乾燥する。紙漉き操作は「縦ゆり」に「横ゆり」を加え,左右方向にも用具を動かして漉くため,繊維がむらなく整然と広がり,美しく漉き上がる。現在,本美濃紙保存会会員と研修生たちによって技術の伝承活動が行われている。