鼻紙台は江戸時代の武家の婚礼調度の一つで、天板には懐紙などをのせ、下の引出には楊枝など身近な小物を入れる。この鼻紙台は、斑梨子地に杏葉紋と丸に揚羽蝶紋を金蒔絵であらわす。取手金具は杏葉紋を象る。杏葉紋は鍋島家の家紋で、丸に揚羽蝶紋は鳥取藩主池田家の家紋であることから、享和3年(1803)に池田家より嫁いだ9代鍋島斉直夫人、姚姫(1788-1837)の婚礼調度と考えられる。姚姫の実妹弥姫は薩摩藩島津家に嫁いでおり、姉妹の子息である10代鍋島直正と島津斉彬は従兄弟ということになるが、ともに殖産興業策や西洋式の軍備拡張につとめた幕末期の先進的な藩主としてよく知られている。