常滑(とこなめ)産の中型の壺。明確な所伝を欠くが、胴部に大きな山キズがあり実用に堪えないこと、窯壁小片が器内に入っていたことなどから、窯場に投棄されていたものの可能性が高い。胴部は明橙~赤紫色に発色し、頸部から肩部にかけては鮮緑色の釉がかかる。口縁部は逆「レ」字形に折り返した三角形で、肩を強く張る。この種の常滑壺は全国に大量流通しており、蔵骨器等に好例をみる。当器は13世紀後半頃のものと考えられる。なお、肩には習書もしくは花押(かおう)ともみられる三文字程のヘラ書きがある。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.74, no.48.