武雄鍋島家旧蔵の資料で、群青・緑青・朱・丹・弁柄・黄土・胡粉・鉛白などの岩絵具や金銀粉・藍棒などの絵具が木箱4箱に残されていた。木箱の一つには、「茂義公皆春齋御繒具」と書かれており、第28代武雄領主鍋島茂義が所有していたものであることがわかる。茂義は西洋科学を積極的に導入し、幕末佐賀藩の近代化に先鞭をつける一方で、皆春齋の雅号をもち、画歴は10代後半からと考えられており、軽快な筆致と古画を好んだことが知られている。
これらの絵具には、その包み紙から江戸の深川や京橋の絵具屋で入手したことが判るもの、長崎出島を通じての西洋の絵具(プルシアンブルーやウルトラマリンブルーなど)なども含まれている。
本資料は、江戸時代の顔料資料の残存という希少性や包み紙の文字情報等、当時の流通や絵画史を究明する上で貴重である。