江戸時代、参勤交代や社寺参詣、婚礼や葬儀といった大名行列の場においては、身分格式に応じた各種の行列道具が必要とされた。乗物・挟箱・立傘・長刀・槍・蓑箱などで、これらは家紋を付けた揃いの仕様で整えられた。
本資料も行列道具のひとつで、茶弁当という。携帯用の茶道具や飲食具を屋根付きの箪笥二つに納め、吊り金具に棒を通して前後に担う。黒漆地に佐賀藩主鍋島家の家紋である筋杏葉紋を散らし、唐草模様をあらわす。対となる半荷は火災に遭い損傷しており(写真奥)、担い棒や日覆い、内容品の多くは失われているものの、鍋島家に伝来した数少ない行列道具の遺品として貴重である。