埼玉県比企郡小川町及び秩父郡東秩父村に伝承されてきた楮和紙の製作技術である。江戸時代,紀州の細川村で漉かれていた細川奉書の製作技術が,大消費地であった江戸に近い武州男衾・比企・秩父3郡に伝えられて盛んになった。細川紙は,商家の大福帳などの帳簿用紙や記録用紙,襖紙などに用いられ,江戸の庶民の生活必需品として重用された。現在は,主に,和本用紙,版画用紙,文化財保存修理用紙として用いられている。細川紙の製作技法は,楮のみを原料に用い,我が国特有の「流し漉き」で漉くものであり,漉き上がった紙は,紙面が毛羽立ちにくく,強靭な性質をもつ。現在,細川紙技術者協会会員及び準会員,研修生たちが技術の伝承活動を行っている。