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徳岡神泉(1896−1972)
TOKUOKA,Shinsen
蓮
Lotus
c.1922(大正11年頃)
絹本彩色・額装 62.0×85.0㎝(徳岡房子氏寄贈)
京都に生まれ竹内栖鳳に師事した徳岡神泉は、京都市立絵画専門学校に進学し将来を嘱望されるが、文展にあいついで落選したことに大きな衝撃をうけ、また自分の芸術にたいする煩悶からしだいに画壇を離れ、1919年富士山麓に移り住んだ。「いくぶん遁世的というか孤独な淋しい気持」ですごすうちに、その芸術はいちじるしく内面性を深め、また同時に自然の本質に肉薄するものとなった。
《蓮》はその代表的な作例であり、1923年京都に戻る前年に制作された。葉のうえの露まで描く徹底的な自然観照により、存在の神秘ともいうべきものが滲み出ている。