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柳原義達(1910−)
YANAGIHARA,YoshltatSu
道標・鳩
Milestone, Pigeon
昭和49(1974)年
作者寄贈
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柳原義達(1910−)
YANAGIHARA,Yoshitatsu
道標・鳩
Milestone, Pigeon
昭和48(1973)年
作者寄贈
鴉や鳩の彫刻の〈道標〉シリーズで親しまれている柳原義達は,ロダンをはじめとするフランス近代彫刻とジャコメッティ,リシェ,マリーニといった戦後のヨーロッパ彫刻を批判をとおして継承し,日本の現代具象彫刻の地平を切り開いた。はじめ日本画を学んでから彫刻を志し,40歳台で渡仏して西洋の空間と事物の確固さとそれを「量(マッス)」として見る目に圧倒されてから,日々の反省をとおして造形の探求を持続した柳原は,ロダンや高村光太郎の彫刻の教えを徹底し,彫刻の本質とは,「立体が生命を宿す工夫をする」ことであり,緊張のうちにバランスをもって「命」として空間に立つ美しさであるとする。そして彫刻が持つ動きを見据え,内的な生命の実現をめざし,素材の感情を生かそうとしてきた。柳原が「私の自画像」と語る,鴉や鳩をモティーフとした連作〈道標〉は,生命との緊張した対話である。孤独に生きる存在へのいとおしさと生きていることの不思議さを刻む,柳原自身の長い歩みの「道標」なのである。(K.T.)