蘆舌(リード)を差して吹く、竹製の縦笛。表に7個、裏に2個の楕円形の指孔があり、音域は1オクターブほど。その音色は「地上で生活する人間の声」を表すとされ、雅楽の中心となる旋律を奏でる。笙・龍笛とともに「三管」と呼ばれ、雅楽に欠かせない管楽器の一つ。
佐賀藩主・侯爵鍋島家伝来の雅楽器のうち14点は、「唐衣」と「壽」の銘が入った2つの黒漆塗の箱に収められて伝わった。これらはもと10代佐賀藩主鍋島直正の所持品であり、その長女貢姫(みつひめ)へ、のち貢姫の弟である直大(なおひろ)へと譲られた。その経緯は、直大没後の昭和6年に栄子夫人が整理を行った際の書付に記されている。
この篳篥は「壽」の箱に収められて伝来した。