鄭培(生没年不詳)は浙江省呉興出身の画家。享保16年(1731)、師である沈南蘋とともに来日したと伝えられます。南蘋の来日はこの一度だけですが、鄭培はその後も来日したことが彼の作品の落款から判明します。
風を受けて、美しく揺れる紅白の牡丹。2匹の小さな蜂(あるいは虻)が風に抗いながらも、牡丹の美しさに吸い寄せられるかのように、大輪の花へ近づいています。土坡、岩、牡丹はいずれも右端に集約し、広々とした余白には部分的に薄く藍をひいています。緩やかな曲線を描く牡丹の枝は、花、葉とともに、余白を引き締め、美しい構図をみせます。没骨描の牡丹の花は、花弁の立体感を巧みに表現しています。紅牡丹の蕾は、この先も牡丹が咲き続けることを予感させるものです。岩に密集する小さな点苔は、南蘋風花鳥画の特徴です。描かれた虫が蜂であるならば、「封」と音が通じることから、高位に就くことを示唆するモチーフ。牡丹は「王者の花」とも称され、一品官や富貴を象徴します。満開の花と蕾には、官位や富貴が永続する意味が込められています。風に揺れる牡丹の繊細な表現は、宋紫石をはじめとして、南蘋風の画家の作品にしばしば認められます。
【長崎ゆかりの近世絵画】