歌舞伎鬘製作 かぶきかつらせいさく

  • 選定年月日:20201009
  • 選定保存技術

歌舞伎鬘製作は、歌舞伎の舞台で用いる鬘の地金(土台)を作り、それに植毛等を行う技術である。鬘製作者(鬘師)は、髪の毛を結い上げる歌舞伎床山とともに、鬘を完成する上で不可欠な工程を担っている。
 鬘製作の工程は、地金の製作から始まる。薄い銅板を型に合わせて切り取り、木槌で打って頭部の形に整えた後、錆止めの処理を施す地金焼き、表面に和紙を貼る下貼りといった作業を経て、地金の基礎が出来上がる。次に、この地金を俳優の頭にかける「鬘合わせ」を行い、俳優個々の輪郭や頭形に合わせて調整する。特に額から頬にかけての生え際の線(刳り)は役柄・性格を表現する重要な要素であり、俳優の役づくりを助けつつ調整を行う技術が求められる。
 続いて、植毛する作業に入る。歌舞伎の鬘の植毛技法は二種に大別され、一つは羽二重に特殊な鉤針を用いて植毛する「羽二重通し」、いま一つは太い絹糸に毛を編み込んでゆく「蓑(蓑編み)」という手法で、蓑のほうが歴史が古い。これら毛を取り付けた羽二重や蓑を、鬢、髱といった部分ごとに地金に貼りこみ、髪を整えて床山に引き渡す。中には、結い上げないため床山に渡さずに鬘師が完成させる鬘や、髭や眉といった附属品製作を伴うものもある。なお昭和初期以降、羽二重や蓑の鬘に加え、ナイロン素材のネットに植毛することで、より自然な生え際を工夫した「網」の鬘も一部の演目で用いられ、これらは地金をアルミで製作することが多い。歌舞伎の鬘は、およそ一,〇〇〇種もあると言われるが、性別、身分、年齢、職業といった役柄によって、使用する種類が定められており、鬘製作にあたっては、用いられる作品や役柄に対する知識も必要である。
 鬘製作には、植毛等の技術のみならず、鬘合わせの技術も重要となる。現在、鬘合わせを担当できる鬘師は少数であり、重要無形文化財「歌舞伎」の伝承を支える上で、鬘の製作技術を保存することが不可欠である。

歌舞伎鬘製作

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