松前神楽は,採物(とりもの)舞(まい),巫女(みこ)舞(まい),湯(ゆ)立(たて)神事(しんじ),獅子舞を揃って伝承する稀有な神楽である。神職による神楽には伝承例の少ない「千歳(せんざい)」「翁(おきな)」「三番叟(さんばそう)」を伝える点にも特色がある。また,演目や芸態等に東北地方の諸神楽との関連もうかがわせる。
松前神楽は,北海道南部で神職が中心となって伝承され、直面(ひためん)の採物舞をはじめ,巫女舞,湯立神事,獅子舞,さらに仮面の翁舞等,多彩な演目を伝え,太鼓や龍(りゅう)笛(てき),手(て)平(びら)鉦(がね)の演奏にのせ,一間(いっけん)四方を舞の場として演じられる。松前神楽の起源は明らかではないが,延宝2年(1674)に初めて福山城内で湯立神楽が行われたとの記録があり,また,松前藩主が寄進した獅子頭も現存する。このように松前神楽は松前藩との深い関わりのもとで行われていたが,現在では,渡島(おしま)地方を中心に,檜山(ひやま)地方や後志(しりべし)地方,さらに留萌(るもい)地方の小平町にも伝承され,各地の約120に及ぶ神社の例祭や新年祭,船魂祭等において神社拝殿で演じられるほか,厄除け祈願や新築祝い等の依頼に応じて個人宅でも行われる。また,新年の門(かど)祓(ばら)いとして地区の家々を巡って獅子を舞わすこともある。