ういきょう

版画 その他

  • 浜口陽三  (1909-2000)
  • ハマグチ、ヨウゾウ
  • 昭和33年 / 1958
  • 銅版・紙・1
  • 29.3×44.0
  • 左下に刷番号; 右下に署名
  • 3回現代日本美術展 東京都美術館 1958

56
茴香
Fennels
1958年
銅版(メゾチント)・紙
31.2×45.5cm
右下に署名:hamaguchi, 左下に書込み:essai
1958年 第3回現代日本美術展

57
桜桃
A Cherry
1962年
銅版(メゾチント)・紙
35.5×30.3cm
右下に署名:hamaguchi, 左下に書込み:bon a tirer
1962年 第3回東京国際版画ビエンナーレ展
黒い画面に、黒から白へ色調が微妙に変わりながらしだいに白い形が現われてくる一この表現が銅版画技法のひとつメゾチントの特色である。この技法により浜口陽三は野菜や果物、あるいは毛糸玉などの日常見なれたものを題材としながら、それらが単なる静物であることやめ、内的光をおびた存在そのものであるかのように黒い画面に表現する。《茴香》はそのあたりをよく示す作例で、大小二つの茴香は内側から光を発する神秘的な、しかし確かな存在として黒い画面にあり、その周辺に静寂な闇が満ちている。無限の空間と悠久の時間すら感じさせる表現、あるいは茴香の簡潔な形とその黒から白への色調、大小二つの茴苗の布置に戦時中の浜口が日本画を研究し、日本画特有の空間表現や水墨画の墨の表現を学んだ跡が見てとれる。
この黒と白の画面に色を加えた技法つまり多色刷りのメゾチントがカラーメゾチントである。18世紀に開発された技法だが、これに工夫を加えて質の高い現代版画を創案したのは浜口で、《桜桃》はその代表的作例である。ニュアンスに富んだ紬地に似た右半面に対して均衡を保つようにやや幅広い黒の左半面にはさくらんぼがひとつ動勢を孕みながら静止している。造形の美しさが集約されたような作品である。《茴香》にしても《桜桃》にしても、浜口の版画にみるものは、作者の徹底した造形美の追求が生んだ沈静典雅な美の世界である.

ういきょう

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