紙を漆で固めて作る一閑張りの手法で作った中棗と小棗。仕覆も紙製。箱書きによれば、名工、神楽丘不入(一七七一~一八五〇)が熱海温泉に逗留中に十二組作り、大名茶人として名高い松江藩主、松平不昧(一七五一~一八一八)に花押を書いてもらった。不入は不昧に気に入られながら一度も松江に赴かなかったため、「松江に入らず」の意の「不入」の号を授かった。不入の希望に合わせ、不昧は花押をばらばらに分解して、蓋と身に分字で記している。
連珠文漆絵中棗 不昧好 狩野典信下絵 不昧在判
面糸目雪吹 不昧好 不昧在判
松平不昧
蟹漆絵高杯形菓子器