紙本墨画淡彩四季山水図〈雲谷等益筆/(雪舟作副本)〉 しほんぼくがたんさいしきさんすいず〈うんこくとうえきひつ/(せっしゅうさくふくほん)〉

絵画 / 江戸

  • 雲谷等益
  • 江戸時代
  • 紙本墨画淡彩 巻子装
  • 縦39.2センチ 長1622.1センチ
  • 1巻
  • 重文指定年月日:20230627
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 伝雲谷等顔筆の副本として昭和32年に「山水長巻」の附指定となった一巻は、その後の研究により様式的に等益の作であって、等益筆模本の記録も存在することが明らかとなった。等益没後の正保3年(1646)に等爾の依頼で付された天祐紹杲の跋によれば、この等益筆模本は等与が「山水長巻」を相続するのに対し、等爾に与えられたもの、つまり山水長巻の副本として機能したものであった。等益が「雪舟四代孫」を称して雲谷派の組織体制を整備する根拠として、雲谷本家には雪舟の旧居・雲谷軒の土地と、秘伝の画本としての「山水長巻」があった。等益は等与に嗣がせた本家に何かあった場合に備えて、等爾家を本家に準じたものにしようとしたのであり、実際に等与・等爾兄弟の法橋叙任は異例の同時であった。等爾は等益の遺志を補強すべく、「山水長巻」副本に天祐紹杲の跋を得たと考えられる。
 本作はこの等益筆副本に該当する可能性が高い。細部を見ると、本作には等益特有の筆致と形態感覚が遺憾なく発揮され、等益の作品として自立していると同時に、「山水長巻」の副本という体裁は維持している。この域に達した等益の画技は驚異的である。
 以上のように本作は、雪舟の画房と代表作を根拠に周防長門地方から独自の雪舟流を発信し続けた雲谷派そのものを象徴する力作である。かつ雲谷派研究ひいては近世における雪舟受容を考える上で欠かせないものであることはもとより、画派形成の具体を伝える絵画作品として、また流派における画本継承のあり方を示す希少な現存例として、その資料的価値は極めて高い。国宝「山水長巻」の価値とは別に、単独で評価しうることから、改めて重要文化財指定とする。

紙本墨画淡彩四季山水図〈雲谷等益筆/(雪舟作副本)〉

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