本絵図は、鎌倉時代後期に作成された絵図を写したものであり、現在の高島市と大津市に所在した比良庄の庄域とその周辺を描いている。
画面の下半分は、琵琶湖側から比良山系の山々を仰ぎ見る形で作図され、底部に湖面を描き、平地部には庄園と河川が描かれる。画面の上半分は、天空から比良山系の西部を見下ろす形で作図され、比良庄、安曇川、比良山系を描くとともに、南部には葛川明王院が描かれる。
比良庄の庄域は墨線で表され、庄園の内部には寺社の堂舎や鳥居、樹木などが詳細に描かれる。また、鎌倉時代後期と南北朝期の裏書が存在し、本絵図が周辺庄園との堺相論に際して作成されたことがわかる。
本絵図に作成年次は記されていないが、裏書にみえる永和の相論以降の作成であり、画風から下限は室町時代後期を下ることはないとみられる。
本絵図は、豊富な注記に加え、裏書により作成された背景も判明するため、中世社会経済史研究上、極めて貴重である。