宋版律宗三大部は、南山律宗の祖といわれる道宣(五九六~六六七)が撰述した四分律関係の著作である『四分律行事鈔』、『四分律戒本疏』、『四分律羯磨疏』の三つをいう。本経疏は南宋時代の版本で、律宗三大部の他に道宣の四分律関係の著作と律宗三大部に註解を加えた宋の元照(一〇四八~一一一六)の著作を集めたものであることから、「律宗三大部幷記文」というべきものである。
本経疏は、表紙の芯に使われた反故紙等の文字から嘉熙二年(一二三八)から仁治二年(一二四一)までに印刷され、印刷後すぐに我が国もたらされたことが分かる。また、『東宝記』から、宣陽門院(一一八一~一二五二、後白河天皇女)の施入によることも知られている。
本経疏は、五二帖というまとまった点数が原装で伝わっていることに加えて、宣陽門院施入の所伝があり、印刷や将来された時期もほぼ特定することができる点からも仏教史、文化交流史研究上、貴重である。