園城寺(三井寺)に伝来した一切経(大蔵経)で、中国・元時代の普寧寺版を主体とし、一部に朝鮮時代の高麗版再雕本と永禄八年(一五六五)の奥書がある書写本の補経を含む。すべてが折本装で、園城寺一切経蔵内の輪蔵に、元時代の経箱に納められて保管されている。
もとは十四世紀に高麗の官人等が元の普寧寺に依頼して印刷し、高麗の寺院に納められたものであったが、十五世紀前半に大内氏の求請によって朝鮮から日本へともたらされたと考えられている。大内氏は周防国山口国清寺に施入し、園城寺の復興事業に携わっていた毛利輝元によって慶長七年(一六〇二)に寄進された。
元版一切経の大部と、経典と一具であった元代の経箱がまとまって伝存しており、伝来過程が明らかにできることから、我が国の仏教史、東アジア文化交流史上、きわめて価値が高い。