軽くウェーブしてやわらかく流れる頭髪、鼻すじが通って彫りの深い顔立ちなど、本質的にはギリシア末期の彫刻様式の特質をあらわしながらも、見開ききらない瞑想の眼差しは、あくまでも悟りを得た静かな仏教的境地を示している。 インドの西北部、インダス河上流のペシャワール地方、すなわち昔のガンダーラから将来されたもの。この地方は古くから仏教が行われ、のちギリシア文化をもつ民族が移ってきて、いち早くギリシア・仏教式の仏像がつくられたが、本例は仏像の製作がこの地域で最も高まりを見せた2世紀後半頃の作と考えられる。