表装漆塗(呂色塗)は、絵画や書跡等の装丁のうち屏風装【びょうぶそう】、額装、襖貼付【ふすまはりつけ】、壁貼付等に用いられる木製の縁木【ふちぎ】の製作に必要な技術である。呂色塗とは深く艶のある漆塗であり、襖や屏風等の縁木は伝統的に呂色塗により装飾されることが多い。
工程は下地、中塗【なかぬり】、上塗【うわぬり】を経た後、研ぎと胴摺【どうずり】を施し、漆の摺りと油や磨粉【みがきこ】による磨きを繰り返すことで光沢を作り出す。艶消しにて仕上げる際には、油と砥【と】の粉【こ】による油胴摺【あぶらどうずり】を施す。表面のわずかな凹凸や傷が見た目の美しさを損じるため、製作には細やかな神経と正確な技術が要求される。
襖、額、屏風等に仕立てられた絵画、書跡類は、我が国には伝統的な室内調度として極めて多数が伝存する。その修理に際しては原則として表層建具とともに呂色塗を施した縁木の新調が求められることから、同技術に対し保存の措置を講ずる必要がある。