「お馬流し」は、横浜の本牧神社に伝わる神事で、厄霊(神)を祓う(放流)する行事である。今から約400年前の永禄9(1566)年にまでさかのぼるといわれる。
かつての本牧村の6集落から1体ずつ奉納される「お馬」は全て羽鳥家が作る。当主が斎戒沐浴した後、約1週間かけて仕上げる。首から上が馬で、体は亀という外見。頭部からの羽や長い尾を含めると、約50cmから約1mの大きさである。頭上に御幣を立て、口に稲穂をくわえさせる。
祭りの前日、羽鳥家から神社へ「お馬迎え式」が行われる。6体のお馬は厚板の上に置かれ、頭上から頭上へゆっくり渡していく。この間、お馬は目より下にしてはならない。神社を出発したお馬6体は輿(自動車)の上に安置され、各町内を巡る。お馬には、それぞれの地域の災いが乗り移るとされる。なお、神社前から輿及び輿から船の間を移動する際も、お馬わたしを行う。
海上では2隻の船に3体ずつお馬を乗せて漕ぎ、沖合で流す。お馬が戻って来ないよう、引き潮に合わせる。流し終えた2隻の船は競争して帰ってくるが、これはお馬に託した災厄から一刻も早く逃れる意味と、古くは勝ち船の順で神社に参詣したことによる。