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近藤浩一路(1884−1962)
KONDO,Koichiro
銀閣寺
Ginkakuji Temple
1957(昭和32)年
近藤浩一路は山梨県の生まれ。東京美術学校西洋画科を卒業。古来、墨の変幻きわまりない色合いの変化を称して、「墨に五彩あり」という。こうした東洋の美学を、印象派の華麗かつ微妙な光の効果に触発されつつも、あくまでも筆一本で実現しようとしたところに、この孤高な画家の持ち味がある。現代フランスの文豪アンドレ・マルローは近藤の画境について、「憂愁が幸福を約束しているような世界」といっている。あたたかな闇にくるまれ、水面にほの明るい室内のかげを落とす銀閣寺。たしかに、ここてはすべてが不思議と安らいでいる。