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難波田龍起(1905−)
NAMBATA,Tatsuoki
原初的風景A
Primitive LandscapeA
1987年
油彩・キャンバス
160.5×160.5cm
難波田龍起展(東京国立近代美術館)
北海道旭川の生まれ。東京で育つ。1923年,高村光太郎に出会い芸術を志す。29年国画会に初入選,セザンヌ,ルドンに傾倒した。37年自由美術家協会設立に参加。42年青樹社画廊で最初の個展。47年日本アンデパンダン展に出品。51年,キュビスム風の画面構成による作品を第15回自由美術展に出品。56年頃初めてアンフォルメルに接する。59年頃から,それまでの鋭角的な色面による構成をより深めるとともに,激しい躍動感と内面性を帯びた作品を描き,60年代には「内部生命の律動感」に根ざした作品世界を展開,近年はさらに東洋的な幽玄さを備えた作品群を制作している。87年東京国立近代美術館において回顧展。
難波田は,時代の流れの中で繊細にその画風を変化させながら,一貫して独自の課題を深め続けた作家である。あたかも形態と色彩で組み立てられた聖堂のようなこの作品においては,その課題であり長い探求の核心ともいえる,ゆらぎ,生成する芸術の,ひいては生命そのものの「原初」へと一人進んでいく,作家の姿を見出すことができるだろう。