『女二題』は、御舟が10か月間に及ぶヨーロッパ旅行から帰った翌年に描かれた作品です。西洋絵画の名品に接した御舟は彼がそれまでほとんど描くことのなかった人物画の制作に意欲的に取り組みました。綿密な写生をもとに対象の細部までとらえながらも簡潔に描写された画面には写実と日本画特有の線描や装飾性との緊密な結び付きが見てとれます。いずれも弥(いよ)夫人をモデルに当時の女性の日常の何気ない仕草の一瞬をとらえています。同じ人物をモデルに着物や髪型、表情など敢えて対照的な状況を描いて対としたことに、画面を見ることにとどまらず、存在するものへの思索へと誘うことを意図したのかもしれません。