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池田龍雄(1928−)
IKEDA,Tatsuo
「禽獣記」より 見張り
On Watch (from“An Album of Birds and Beasts”)
昭和32年(1957)
東京国立近代美術館蔵
日本の前衛芸術運動のなかで社会変革に芸術の活路を見出そうとした池田龍雄は,1950年代,シュルレアリスムを根底としてルポルタージュの問題に着手し,同時代の社会的事件の底に潜む人間性の問題を取り出そうとして,社会風刺性の強い細密画の連作を描いた。≪禽獣記≫シリーズは,動物の獣性に託して社会や人間性の風刺を試みた連作で,この作品では,工場の前の邪悪な双頭の犬が,当時頻発した労働争議の体制側の手先の象徴となっている。この頃,ペンのタッチは長くなり,画面は濃密で暗くなって,時代の雰囲気と呼応している。