広隆寺桂宮院本堂 一棟
桂宮院は広隆寺の境内西北の一隅にあり、聖徳太子が草創するところという。その後の沿革は明らかではないが、寺蔵の勧進文によれば宝治年中(一二四七~四九)廃絶に帰していたようである。現本堂の建立年次も明らかでないが、様式手法より鎌倉時代と思われ、さきの勧進文よりみて、建長三年(一二五一)頃に建立されたもののようである。
堂は八角円堂で周囲に縁をめぐらし、勾配の緩い八柱檜皮葺の屋根をのせ、宝珠を上げ、安定した外観をしている。八角造の柱、三斗組、大面取の二軒繁垂木など、木割は繊細で、素木造の軽快優美な堂である。内部には柱がなく天井は中央より八方に緩い勾配を付した鏡天井を張り、装飾のない簡素な造りである。鎌倉時代の円堂建築として貴重な遺構である。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)